
街中を走っていると、こうした魅力的な看板やチラシを目にすることがよくあると思います。特に今は、物価や資材価格も上がっている時代ですから、「少しでも安く、良い家を建てたい」と願うお客様にとって、とても魅力的に映るのも当然のことです。
ですが、長年現場で家をつくってきた職人・経営者として、これから初めて家づくりをされる方にどうしてもお伝えしておきたい「業界の裏側」があります。
1. その看板の数字は「嘘」ではないけれど…
まず誤解のないようにお伝えすると、こうした「700万円台〜」「800万円台〜」といった看板やチラシの数字は、決して詐欺や嘘ではありません。実際にその金額で設定されている極小プランや、基本仕様の「建物本体」が存在するのは事実です。
しかし、ここが最大の落とし穴です。
その価格は、あくまで「建物そのもの(ハコだけ)」の価格であって、「今日から鍵をもらって暮らせる状態の総額」とは全く別物なのです。
2. 昭和・平成から続く「安く見せる商法」のカラクリ
実は、価格を細かく分散させて安く見せる手法は、昔から業界でシステム化されてきた「営業の商法」の一つです。
〇 看板の安い数字で「これなら買える!」とお客様を呼び込む
〇 打ち合わせが進むにつれて、屋外給排水工事、地盤調査・改良費、確認申請費、諸経費…と費用が後から乗ってくる
〇 ドアやコンセント、網戸などの仕様を標準から少し変えるだけで、オプション費用が跳ね上がる
専門知識のない施主様ほど、最初に見た「〇〇〇万円」という数字が頭にボーンと残ってしまいます。
実は以前、私の娘も街の看板を見て「お父さん!あのお店なら〇〇〇万円で家が建つんだって!」と嬉しそうに話してきたことがありました。建築の知識がない若い世代や初めて家を建てる方ほど、仕様や中身よりも「看板の大きな数字」だけが頭に残ってしまうのは当然のことです。
だからこそ、打ち合わせを重ねて最後に「えっ…こんなにかかるの?」と現実の数字を突きつけられた時、「こんなはずじゃなかった…」と、とんでもないズレに苦しむことになってしまうのです。
3. テスラ(イーロン・マスク)に学ぶ、これからの「プロの明朗会計」
今の時代、世界をリードする電気自動車のテスラ(イーロン・マスク)を見ても分かる通り、世界のモノづくりの常識は「明朗会計」へと大きくシフトしています。
テスラの買い方は非常にシンプルで、WEB画面で車を選べば、必要な装備や費用がすべてオープンに表示され、「最終的にいくら払えば乗り出せるのか(総額)」が一目で分かります。 後から「実はハンドル代は別です」「エアコン代が加算されます」なんて後出しジャンケンは一切ありません。
これこそが、現代のユーザーが求めている「本物のプロの仕事」です。
家づくりも全く同じはずです。
費用を細かく分散させて一般の方を煙に巻く昭和・平成の古いやり方ではなく、「最終的にいくら払えば、今日からこの家で家族が生活できるのか」を最初から一番分かりやすく提示することこそが、これからの時代における住宅会社(プロ)の誠意であり誇りだと私は考えています。
◆ 最後に:初めて家を建てる皆様へ
初めての家づくりで失敗しないための防衛策は、とてもシンプルです。
看板の「〇〇万円〜」という数字だけで判断せず、検討の早い段階で必ず「付帯工事も申請費も含めて、鍵をもらって今日から暮らせる【引き渡し総額(乗り出し価格)】はいくらになりますか?」と担当者に聞いてみてください。
最初からごまかさず、テスラの提示のように分かりやすい総額で勝負してくれる誠実な会社と一緒に、笑顔で幸せになれる家づくりを進めていただきたい――それが、現場で叩き上げてきた私たちの一番の願いです。









